年間ベストアルバム50~1
はじめに
どうも李氏です。今回年間ベストの記事を書くにあたって50枚選ばせていただきました。あれがないこれがないといろいろ不満があるでしょうが、あくまで個人のベストとして楽しんでいただけると幸いです。さて振り返ってみれば今年も素晴らしいリリースが相次ぎ、時には「テン年代の総決算」という言葉まで飛び交う始末。来年はそして次のディケイドはどんな音楽が鳴っているのか。僕のものも限らず、個人の年間ベストや各メディアの年間ベストを眺めている中で見えてくるものもあるかもしれません。とまあ大風呂敷を広げておいてなんですがさっそく、50位のものから紹介しましょう。
50位 Ian William Craig / Thresholder
今年聞いたアンビエントその1。Lowの新譜とも共振するような繊細なノイズ音響に引き込まれました。オペラをバックボーンにしているらしくそれも驚き。
49位 JIL / Emotional Heat 4A Cold Generation
フランクオーシャンから始まるオルタナティブR&Bの潮流の一端に数え上げられるアーティストでしょう。全曲にみなぎるサイケデリアにズブズブと沈み込んで行きます。
48位 Low / Double Negative
シューゲイザーから不純物を取り除いていったらノイズアンビエントが残った、そんな凄まじい音響がここでは確かに鳴らされています。
47位 Yves Tumor / Safe In The Hands Of Love
ベン・フロストからザ・キュアーまで、雑多そのものという内容のアルバムですが、その中にも1つの美意識が貫かれています。
46位 Mr. Twin Sister / Salt
清新なトリップホップ。Massive Attackの『Protection』を現代に蘇らすとしたらこの形しかない。
45位 NINE INCH NAILS / Bad Witch
再始動後の作品では一番いいのではないでしょうか。ジャズへの接近もこれまでになかったもので面白い。
44位 ROTH BART BARON / HEX
あくまでロックバンドとしての形式は崩さずどこまで挑戦的なことができるか、その努力の結晶がこのアルバムであるように思えます。歌の力強さが素晴らしいですね。
43位 Various Artists / The Wall [Redux]
ピンクフロイドの遅延の感覚がヘヴィミュージックを通過することで見事に昇華されています。あのメルヴィンズが参加しているのが何気にすごいポイント。
42位 Bliss Signal / Bliss Signal
ブラックメタル×電子音楽という何とも美味しい組み合わせです。こういうのは本当聴くのをやめられない。
41位 Amnesia Scanner / Another Life
鉄と血の音楽。
40位 Lauren Auder / Who Carry's You
True Pantherからの新人。Waveムーブメントやヒップホップからの影響がありつつも独自のヨーロッパ的美意識を感じさせるアーティストです。今年のロンドン関連では一番好きですね。
39位 Pendant / Make Me Know You Sweet (OUEST099)
今年聴いたアンビエント作品その二。異様な緊張感に満ちた音像です。普段はこの種の音楽はあまり聞かないたちなのですがこれには流石にやられてしまいました。
38位 落差草原WWWW / 盤
Jambinaiあたりも想起させるアジアンエクスペリメンタルロックミュージック。次の来日時には絶対に駆けつけたい。
37位 mewithoutyou / [Untitled]
どこまでも真っ直ぐなオルタナティブロック。個人的にはCloud Nothingsよりもこっちでした。
36位 DRUGONDRAGON / どっかの誰か 誰かの何
単にシューゲイザーとくくるにはあまりに禍々しくあまりに切実なポップソング達。Xinlisupremeを更新するのは彼なのかもしれません。
35位 Antonio Loureiro / Livre
Twitterのフォロワーの方のお勧めで知った一作。ジャズやポストロックといった要素が継ぎ目なく融合し、芳醇な音楽世界を作り出しています。
34位 Thom Yorke / Suspiria (Music for the Luca Guadagnino Film)
ピアノの弾き語りをさせたら彼の右に出るものはいない。歌ものだけで言えばソロ作のベスト。
33位 The Samps / Breakfast
どこまでもサイケデリックでアブストラクト、でありながらポップ。
32位 Oracle Hysterical / Hecuba
こんなのジャケからして最高に決まっています。二曲目の『100 Tongues』がレディオヘッドとsalyu×salyuの融合のようで素晴らしい。
31位 Cheem / CheemTV
パワーポップの完璧な蘇らせ方。ファンク、エモ、ポストロックと様々な音楽的語彙を駆使するその手練れぶりはThe 1975に続くかもしれません。
30位 The Armed / Only Love
うるさい音楽はいつだって最高なのです。
29位 Nahja Mora / As Death
OPNとFront Line Assemblyの間を結ぶ補助線のようなアーティストです。過去3作でてますがどれも素晴らしいですね。
nahjamora.bandcamp.com
28位 OddZoo / Future Flesh
シューゲイザー×メタル×エレクトロという文句なしの組み合わせ。EDM的な文脈にもハマりそうです。
27位 The Body / O God who avenges, shine forth. Rise up, Judge of the Earth; pay back to the proud what they deserve.
26位 Zeal & Ardor / Strange Fruits
ブラックミュージックとブラックメタル。半ば冗談めいた組み合わせですがこれがべらぼうにかっこいい、来年のダウンロードフェスに呼ぶべきでしょう。
25位 Vessel / Queen of Golden Dogs
ArcaとJlinとSOPHIEのキマイラ、そんな化け物のようなサウンドが確かにここで鳴らされています。8曲目のPapluが白眉。
24位 崎山蒼志 / いつかみた国
アコギの弾き語りという手垢のつきまくった手法でここまで未聴感を出せるとは驚きです。今後の活躍に期待したいですね。
23位 空中泥棒 / Crumbling
こんなThe Age Of Ads期のスフィアンすら彷彿とさせるようなバンドが、同じ東アジアの地にいたとは率直に驚きでした。日本盤はなんとしてでも手に入れます。
22位 Floex & Tom Hodge / A Portrait of John Doe
ポストクラシカルに分類されそうな音ですが、こういうスケールの大きいエクスペリメンタルミュージックには弱いですね。
21位 People In The Box / Kodomo Rengou
フィリップ・K・ディックの描く郊外、須田剛一の『シルバー事件』と固有名詞が浮かんでは消えていく。個人的にはP-Modelなんかと近しいところがあるように思います。
20位 Anna Von Hausswolff / Dead Magic
自分はJulia Holterよりも断然こちらを推したいですね。呪いと祝祭が表裏一体であるような世界観というか、とにかく必聴です。
19位 Lack The Low / One Eye Closed
まず何よりも歌ものとしての強度に惹かれました。制作に三年かかったというのも納得の完成度。
18位 IDLES / Joy as an Act of Resistance
知性と衝動の弁証法の果てに男たちは汗まみれの高みへと向かう。2018年最高のパンクミュージック。
17位 Zanias / Into The All
電子音楽と幽玄、深くリバーブのかかったその声は僕らを彼岸へと導く。
16位 ARS WAS TAKEN / HOLD ON 2 ME
サイバーグランジとでも言うべき音楽性。第三次世界大戦後の東京では多分こんな音が鳴っている。
15位 BROCKHAMPTON / iridescence
今一番ライブを見てみたいヒップホップクルー。来年のサマソニあたりどうでしょうか。
14位 Mom / PLAYGROUND
寂しさと隣り合わせの日常を生きる僕たちに精一杯の魔法を。クラフトヒップホップはきっと君に優しい。
13位 George Clanton / Slide
夏の終わりにこれ以上ふさわしい音楽があるでしょうか。シューゲイザーもレイヴも全て通過した先にある白と青。
12位 Albatre / The Fall of Dammed
ジャズバンドとハードコアの見事な融合。ヘヴィなサックスのなんと艶やかなこと。
11位 Conduit / Drowning World
ロックが死んだなどと寝言を吐く人間にはこれをぶつけてやりましょう。殺気しかない10曲34分。
10位 THE NOVEMBERS / Live sessions at Red Bull Music Studios Tokyo
この国におけるモダンなロックとは何か、その答えの1つがTHE NOVEMBERSだと思います。『ANGELS』本当期待しかありません。
9位 Moses Sumney / Black in Deep Red, 2014 - EP
レディオヘッドを超えられるのはこの男しかいない、モーゼス・サムニー。
8位 Rafiq Bhatia / Breaking English
楽器を鳴らすということ。それらが響き合い一つの空間をなすということ。魅惑に満ちた音響の企み。ノイズと感情。傑作。
7位 Anguish / Anguish
ヒップホップ界最大の異端児Dalekとクラウトロックの雄Faustとのコラボ、良くないわけがないですがこれがまた凄まじい。ノイズ、ジャズ、ロック、ヒップホップといった諸ジャンルが渾然一体となって聴き手に襲いかかってきます。
gutfeelingisanguish.bandcamp.com
6位 cero / POLY LIFE MULTI SOUL
白も黒も、西も東も、仮想も現実も、何もかも飲み込んだバンドミュージックの巨大な潮流の最先端に位置付けられる一作。マスターピースですね。
5位 KID FRESINO / ai qing
Anderson .Paakの『’Til It’s Over』の続きを夢想するとしたらきっとこんなアルバムになるはず。ピリオドの向こう側にある未来。
4位 The 1975 / A Brief Inquiry Into Online Relationships
自分たちの『OK Computer』や『The Queen Is Dead』を作る、そう宣言したマシューの言葉は決してビックマウスでは無かった。テン年代の総括にしてロック史の新たな展開を告げる傑作。
3位 三浦大知 / 球体
三浦大知とNao'ymt の緊密なコラボレーションが生んだ今作は、システマティックな分業制というよりもむしろ属人的で職人的なストイックさの産物と言えるでしょう。2018年のJ-POPシーンの生んだ最大の果実。
2位 中村佳穂 / AINOU
うたとトラックが躍動しながら精妙に絡み合う。ポップ音楽の自由と歓びがここにある。
1位 Jeremy Dutcher / Wolastoqiyik Lintuwakonawa
時代を完全に超越した、音楽の神秘そのものであるようなアルバム。これ以外に今年のベストはあり得ない。
という訳で今年のベストを振り返ってみたわけなんですけど、こう共通のシーンだとか共通のジャンルであったりだとかが全然読み解けなくて混沌としているという印象を受けました。いろんなところから矢継ぎ早に傑作がリリースされるのでそれを追いかけるのに必死という感じがありましたね。来年もこの勢いが続いてほしいものです。