2018/11/11リキッドルームTHE NOVEMBERSワンマン公演がとんでもなく良かったという話

 今回参加させていただいたTHE NOVEMBERSのワンマンが衝撃的な代物だったので半分休止状態だったこのブログを使って簡単に感想をまとめておきたいと思う。まず全体のセトリを見てみよう。

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 初期曲の『ア_-オ』から始まった今公演はいわゆる彼らのドリーミーサイドの曲を冒頭に配置するような展開となっていたが、これがまた単なるドリームポップに終わらないのが彼らの面白いところ。ドラム担当吉木が刻む重たく荒々しいビートがロックンロールとしての側面をにわかに表面化させ、曲の世界観の中で両者が拮抗しあい昇華されていく様は圧巻であった。『美しい日』の終盤では小林のボーカルは半分シャウトに近いそれと化し、続く『Journey』ではダークなノイズが会場を覆った。この時のノイズはまさしく包み込まれるというべきもので音響体験としてはほとんど未知のそれであった。このあたりから徐々に暗黒へと傾いていく会場、『ひとつにならずに』ではNIN顔負けのインダストリアルノイズをぶちかまし、続いて『鉄の夢』『Ghost Rider』『dysphoria』では暗黒ダンスパーティーともいうべき異形のヘヴィミュージックを観客に叩き込んでくるTHE NOVEMBERS。『彼岸で散る青』で若干クールダウンさせつつ圧巻のボーカルワークを見せつける小林、続く『dogma』『Xeno』『黒い虹』で再び観客を暗黒の熱狂のるつぼに飲み込んでいく。その後「11年前の曲をやります」というMCとともに演奏されたのは『バースデイ』、これがデビュー間もない曲とは思えないくらいの代物で、今のTHE NOVEMBERSがこれをやる意味と必然性に満ちた特大の轟音が会場を貫いていった。そして本編ラストの曲『Hallelujah』は観客を含めた全員の生を肯定するかのような雄大なロックナンバーで、これで本編が終了。

 続いてアンコールではなんと未発表の新曲を初めて披露。打ち込みを主体としたドリームポップという趣でこれまでの彼らの作風を考えれば明確な新機軸と言えるだろう。来るべきニューアルバム『ANGELS』への期待を高めつつ、アンコールラストの曲として『いこうよ』を演奏。「愛なき世界、爆音を震わせる、君の中で何かが変わる」という剥き出しになったバンドのアティチュードを差し出された僕はただただ茫然と小林のシャウトを眺めているほかできなかった。圧倒されていたし何よりも美しかった。

 バンドの様々な側面を見せながらそこに通底する美学をこれでもかとばかりに突き付けてくるこの恐るべきショウは、今のTHE NOVEMBERSが今まさに一つのピークをむかえつつあることを見事に証明しているのではないか。僕はそう思う。