OPNとFront Line Assemblyが交わるところーーーNahja Moraの可能性

  僕がこの記念すべき一回目のブログで紹介しようとするのは、バルチモア出身のホラーインダストリアルミュージックを自称するNahja Moraだ。

  彼らは既に本作を含め3枚のアルバムを発表しているが、今回取り扱うのは最新作の『As Death』である。この禍々しくブルータルなエレクトロノイズの応酬の中でも一際大きな輝きを放つ『this is not hopelessness』をベストトラックとしてこれから検討していくこととする。(http://nahjamora.bandcamp.com/album/as-death)

  静かなノイズトラックとともに最初進行するこの曲は突如強烈な轟音とともに引き裂かれ、無機質なインダストリアルビートがそれに続く。禍々しいうめき声のようなものが聴こえ出し、さながら地獄の様相と化する。終盤からはインダストリアルビートもさらに性急さを増し混沌の中で曲は突然終わる。

 ここにはOPNがGarden of Deleteで見せた電子ノイズの応酬も、Front Line Assemblyのインダストリアルビートもそれら全てが一体となって機能しており、いわば彼ら二組の合いの子ともいうべき楽曲に仕上がっている。

  ここで例に出した二組のキャリアをざっと追ってみよう。OPNはブルックリンを拠点とするミュージシャン、ダニエル・ロパティンによるソロプロジェクトであり、ノイズ・アンビエント・ドローンとそのジャンルは多岐にわたっている。現在までに8枚のアルバムを発表しいずれも批評筋から高い評価を受けている。

  一方、Front Line Assemblyの側はどうか。元スキニーパピーのメンバーであったビル・リーブを中心に結成されたFront Line Assemblyは現在に至るまで活動を続け計19枚のアルバムを発表したが、そのどれもが著名音楽批評サイトであるPitchforkでレビューすらない状態となっている。

  ここにOPNが象徴するであろうエクスペリメンタルミュージックとFront Line Assemblyが代表するエレクトロインダストリアルミュージックの間の溝を見ることもできるだろう。

  この溝を乗り越える試みがなかった訳ではない。先ほど名前を挙げたOPNはエレクトロインダストリアルミュージックの方法論を一部取り入れる形でGarden of Deleteを完成させたし(https://m.youtube.com/watch?v=td-e4i2BL_Q)、Blanck MassのWorld Eaterではそれがより過激に推し進められている(https://m.youtube.com/watch?v=Afymin3h1mI)

  ただ注意が必要なのはこれらがある種のアイロニーとしての受容の側面を含んでいるということだ。単純なリスペクトというよりも「あえて」今これをする、そのような意図が見え隠れするのも事実だ。

  翻ってNahja Moraへ戻ろう。彼らのホームページのデザインを見る限り、アイロニーというにはあまりにも深くインダストリアルの美学が刻まれているのがわかるだろう。(http://www.nahjamora.com/mobile/)

  そう、奴らはマジなのだ。本気でインダストリアルな美学に殉じたまま、それらを奇形化させ解体し全く別のオルタナティブな音楽へと変成させようと試みている。そして、本作『As Death』を聞く限りにおいてその試みは大いに成功していると言わざるを得ない。